イベントや催し物の上空から、ドローンで空撮したい人は多いです。

 

ですが、過去に怪我人が出る墜落事故が起きてしまったた為、このような場所でドローンを飛行させるには、厳しい規制をパスしなければいけなくなりました。

 

イベントのドローン撮影の注意点

墜落による事故の対策

イベントや催し物では、何より墜落のリスクが高くなります。もし、墜落させてしまうと、人にドローンがぶつかる可能性が高く、法的責任を問われることもあります。

 

その代表的な例が2017年11月の、岐阜県のイベント会場でドローン墜落事故です。子供4人を含む6名の負傷者が生まれたこの事故により、イベントや催し物でのドローンフライトには厳しい規制がかけられました。

 

このような事故が再び起きてしまうと、ドローンの規制が厳しくなり、今後のドローンの社会進出にも影響します。墜落による事故の対策をきっちりと立てておきましょう。

 

具体的には、立入禁止区域の設定、プロペラガードなどの装着、観測者の配置などです。これらのポイントは後述しますので、参考にしてみて下さい。

 

バッテリー切れ・接触・操縦不能

イベントでは、タイミングが合わずに、離陸した後ですぐに撮影が出来ないことがあります。イベントの管理者や、進行役と十分に打ち合わせをしておかなければいけません。

 

また、こちらの風待ちなど不測の事態が起こることがあります。予備のバッテリーを何本か用意して、常に余裕を持ったバッテリー管理を行います。

 

イベントで撮影タイミングがやってくると、パイロットは周りが見えなくなることがあります。よい映像を納めるために、周囲の確認をせずにドローンを動かしてしまうのです。このような飛行は、建物や木、そして人に接触してしまう原因になります。

 

接触事故を起こさないためには、隣に目視でアドバイスをくれる監視者をお願いしておきます。これは、申請時にも問われる条件ですので、イベントでのフライトには、必ず人員を確保する必要があります。

 

事前の許可申請の準備

ドローンの飛行申請には大きく分けて2つの方法が有ります。

 

・包括申請 予め申請をしておき、フライト後に報告する方法です。最長1年で、いちいち事前に申請する必要がないので、この申請方法をとるパイロットがほとんどです。

 

・個別申請 フライトの10営業日前に、申請する方法です。イベントや催し物での申請では、この個別申請をしなければいけません。

 

そして、申請の内容も難しくなります。イベントや催し物の許可申請には、規制項目が増えるので、注意しましょう。

 

念入りな実施計画

通常のフライトで、ロケハンなどが出来ない時は、当日いきなり飛行させることもあるでしょう。しかし、イベントや催し物では通用しません。

 

申請の際に飛行経路の特定をしなければいけないからです。そして、それに沿った立ち入り禁止区域を設定する必要があります。

 

航空法と罰金

ドローンの飛行は航空法132条により規定されており、破ると50万円以下の罰金が発生します。さらに、人を傷つけたり他人の財物を損傷させてしまったら、それに応じた慰謝料や示談金、損害賠償などをしなければいけません。

 

イベントではそのようなリスクが高まります。軽い気持ちでドローンを飛ばしてしまうと、大きな損害を出してしまいます。法令を遵守し、ドローン保険に加入しておくべきです。

 

イベントや催し物のドローンの規則

それでは、イベントや催し物での、ドローンフライトの規則をみていきましょう。ドローン(マルチコプター)には、現実的でない条件も有ります。どれも、安全のために軽視せず、きっちりと守らなければいけません。

 

航空局の発布した無人航空機に係る規制の運用における解釈についてを基に、イベントや催し物でのドローン飛行でやってはいけないこと、やるべきことをチェックしていきます。

 

飛行経路の特定

イベントの主催者と打ち合わせをして、ドローンの飛行経路を特定させなければいけません。ロケハンをして、実際に飛行させてみると良いでしょう。フライトレコーダーに記憶させるか、経路をプログラミングさせておけば、申請もスムーズになります。

 

全体と気象を観察する補助者が必要

イベントや催し物での飛行には、パイロットにアドバイスをしてくれる補助者が必要です。会場全体を見舞わせるだけでなく、風や雨などの気象条件もチェックします。そして常にパイロットの近くにいるか、通話できる状態にしておきます。

 

目視できる位置にいることも重要です。場合によっては複数の補助者が必要になるでしょう。

 

第三者が立ち入れないように注意喚起する

イベントに参加する第三者に「ドローンの撮影が入ります」と注意喚起しなければいけません。上空にドローンが飛んでいることを意識してもらうことで、万が一墜落事故が起きた時の対応が良くなるからです。

 

また、人格権侵害に備えることも出来ます。ドローンで撮影されていることを周知しておけば、後で肖像権などで訴えられることも少くなるでしょう。

 

※実際には、顔が認識できるような映像でなければ、人格権侵害は立証されません。ですが、肖像権は曖昧なので、裁判など面倒なことになるのは変わりません。

 

第三者が立ち入れない立ち入り禁止区域の設置

万が一墜落事故を起こしてしまっても、人に接触しないことが求められます。ですので飛行経路周辺は立入禁止区域にする必要が有ります。ドローンの高度によった、立ち入り禁止区域の広さは変わっていき、高くなればなるほど広くなると覚えて下さい。

ドローンの高度と侵入禁止区域の図
150m以上の高度を飛ばすには、さらに特別な許可が必要です

ドローンが20m以下の高度ならば、半径30mの立入禁止区域が必要です。

  • 高度50mなら半径40m
  • 高度100mなら半径60m
  • 高度150mなら半径70m
  • 150m以上の高度まで上げるには、さらに特別な許可が必要になります。

 

立ち入り禁止区域の例外!人の頭上を飛ばすには

イベントによっては、人の真上からの映像が欲しくなることもあります。その為には、イベントでの立ち入り禁止区域の例外を認めてもらわなければいけません。さらに厳しい規制となります、その内容を見ていきましょう。

 

プロペラガードなどを装着

人の頭上を飛ばすには、ドローンで一番の凶器になるプロペラを保護しなければいけません。プロペラガードなどを装着する義務があります。

 

国土交通省のルールでは「衝突の際の衝撃を緩和する素材」となっていますが、現状ではプロペラガード以上のものはありません。人の頭上をネットで保護する方法もありますが、現実的ではなく、万が一の墜落時の備えにはプロペラガードを装着するのが一般的です。

 

パラシュートを装着

墜落時に作動させることが出来るパラシュートを装着しなくてはいけません。ドローンにとってパラシュートを展開させるシステムは異物ですから、それだけバランスを崩すことになります。大型のドローンにしか装着することはできず、空撮に適した1kgから2kg、mavicやファントムシリーズには、まだパラシュートは現実的では無いでしょう。

 

バッテリーの並列化

バッテリーを並列化させることで、1つが死んでももう1つで緊急降下させることができるようになります。こちらの条件も厳しく、現実的ではありません。バッテリーはドローンで最も重い部分です。余計な重量を抱え込み、さらに並列化させる改造を行うのは辞めておきましょう。

 

高い電圧を使用するドローンで、バッテリーの並列化をするには専門的な知識が必要です。それをさらにバランスを維持するのはリスクのある行為と言えます。

 

風速が基準を超えると飛ばしてはいけない

風速が秒速5m以上、もしくはドローンと風速の和が秒速7mを超えた場合はドローンを飛ばすことは出来ません。

 

風速5m/s以上というのは、時速18㎞/hに相当します。自転車でスピードに乗った時ほどのスピードですが、地上付近で5m/sの風が吹いているならば、上空では更に強風が吹いていると考えられます。

 

このような場合は、ドローンで航路の維持が出来なくなり、禁止区域を外れる可能性があります。また、風に抵抗する為、バッテリーの減りも早くなります。

 

無理をすればフライトできる状況ですが、もし、イベント上空で強風に煽られ墜落した場合、その被害は甚大なものとなるでしょう。航空法で強風時の飛行は禁止されていることを、イベント関係者にも伝えておくべきです。

 

パイロットの飛行経験が10時間以上必要

イベントや催し物の上空でドローンを飛ばすには、それなりの経験が必要です。パイロットは10時間以上の経験が求められますし、ドローンにもメンテナンス状況などの提出が、申請に必須です。

 

イベントや催し物のドローン許可申請

イベントや催し物で企画を行う際、申請が必要なフライトについて解説します。具体的には、夜間飛行や、物体の投下など、特別の許可がないと出来ないので注意しましょう。それらの申請の際のポイントについても記述しますので、参考にしてみてください。

 

夜間の撮影

ドローンをフライトさせることが出来るのは、「日出から日没まで」と規制されています。ただし、イベントによっては、夜の空撮を求められることもあるでしょう。もし、夜間飛行を行うのであれば、以下の点を準備して申請をしなければいけません。

 

ライトの装着

ドローン本体に、ライトを装着する方法です。すでに殆どのドローンにはライトが装着されており、それを目視で確認できる状態でなければいけません。もしくは、ドローン自体を下からライトで照らし、ドローンを目視できるようにする必要があります。

 

飛行経路の調査

夜間の飛行をする前に、ロケハンで日中テストする必要が有ります。飛行経路を調査して、ルートをプログラミングしておくといいでしょう。

 

当日、夜間のフライトでは、離着陸だけを手動で行うのが理想です。ドローンからの映像は、ある程度の光量がないと使えません。飛行アプリも対象を認識できないので、エラーを警告してきます。

 

そこで、手動での離着陸操作になります。何も見えなくても、ドローンがどこを飛行しているのか分かるように、頭に飛行経路をインプットしておくべきです。

 

夜間飛行の訓練を経験済みであること

ドローンパイロットにも夜間飛行の訓練を受ける必要があります。アプリエラーなど、日中と違うイレギュラーなことが起こり、かつ目視がしにくいので経験を積まなければ夜間飛行は出来ません。GPSの補正が効かず、風に流されたり、映像も光量が足りないので使えないことがあります。

 

ドローンからの物体投下

2017年の岐阜での事故のように、イベントではドローンで上空から物体を投下させるには注意が必要です。物体を投下させるための装置だけでなく、そのための許可を取得しなければいけません。

 

積載重量(ペイロード)を超えない

ドローンにはそれぞれ積載重量(ペイロード)があり、それを超えて物体を運ぶことはできません。

 

空撮をメインにしたドローンでは、積載重量はあまり無く、物体投下をするのは難しいです。産業用ドローンの出番となるでしょう。

 

産業用ドローンでは、このジャンルの開発が進んでいます。物体投下に特化したドローンならば、トラブルが起きる確率は低く、安全であることを証明しやすくなります。

 

地面に置くのはOK

物体の投下は、墜落し負傷した前例がある以上、許可申請の難易度は高くなっています。

 

そこで、物をA地点からB地点へ移したいのなら、空中から投下するのではなく、地面に置くことで特別な許可は不要になります。

 

人や物から30m未満に近づく飛行

イベントや催し物では、参加者の表情や物などをアップで撮影することを求められることがあります。

 

この時、イベントの参加者など第三者(パイロットではなく、イベントの関係者でもない人)に30m未満の距離でフライトさせることは禁止されているので注意しましょう。

 

もし、30m以内の接近が必要ならば、まず第三者の制限を外すことです。

 

「ドローンを飛ばしてもいいですか?」と許可を得ることができれば、その人は第三者では無くなります。

それが難しいのであれば、安全性を証明して、申請をしなければいけませえん。

  • 飛行ルートの確定
  • プロペラガードなどの装着
  • パイロットの経験
  • パイロットのサポートをする補助者

が必要になります。

 

イベントや催し物のドローン撮影でやるべきこと

実際に飛行させる時の、具体的なポイントについて解説していきます。

 

イベントや催し物とは?国土交通省に確認する

そもそも、「イベント」や「催し物」とは何でしょうか?一般的には「不特定多数の人間が、ある場所に集まること」としています。ですので、祭りやコンサート、結婚式などもイベントに当たります。

 

ですが、人が集まる場所でもイベントや催し物とならないこともあります。例えば、学校や工場など、閉鎖されて他人の侵入がない場所です。このような場所で飛行させるのであれば、第三者への危害は、ほぼ起こりません。国土交通省に説明することで、イベントや催し物ではなく、通常の場所として認定されることがあります。

 

フライト予定のイベントや催し物が、このような例外に入るか確認しましょう。

 

20m以下で飛行する

立ち入り禁止区域は、高度をあげるほど広がって行きます。ですので、最低限の高度である20mまでであれば、立ち入り禁止区域を最小でとどめることができます。

 

イベントによっては、十分な立ち入り禁止区域を設定できないことがありますので、飛行高度を犠牲にし、申請を容易に通すことができるでしょう。

 

各種申請を届ける

国土交通省へ10営業日前に届けることは当然です。そして、それ以外にも申請を届けておきましょう。

 

警察への届け出

もし、会場に道路などが通っており、その上空を飛行させるのであれば、警察への届け出が必要になります。また、道路だけでなく、原子力発電所など国の重要施設が近くにあるのであれば、同じように管轄の警察署へと届け出ましょう。

 

警察への届け出が必要な地域は、警視庁のHPで公開しています。

 

対象施設周辺地域において小型無人機等の飛行を行う手続き

イベント主催者への届け出

イベントが大きなものである場合、ドローンを飛行させることが正確に伝わっていないことがあります。具体的な日程、飛行経路、立入禁止区域などをイベント主催者側へ通達するといいでしょう。

 

土地権利者への届け出

イベントが行われる土地だけでなく、周辺の土地権利者へ届け出をしておくのをおすすめします。もし、イベント主催者側と土地権利者が揉めていた場合、ドローンは揉め事の対象として取り上げられるからです。

 

ズームが出来るドローンを使用する

ドローンによっては、ズームレンズを搭載した機種が有ります。イベントでは飛行経路が限定されるので、このようなドローンを使用すると、満足な撮影が可能です。人物や物のアップを撮影することが可能です。

 

屋内の利用であれば許可は必要なし

屋内の利用であれば、ドローンは誰でも許可なく使用することが出来ます。体育館やコンサートホール、そして工場などでの撮影ならば、これまで記述したルールに従う必要はありません。

 

ただし、天井にドローンが接触してしまうことが考えられますので、くれぐれも操縦には注意が必要です。

 

100g以下のドローンには許可はいらない

100g以下のドローンであれば、墜落しても被害は少ないとして航空法の制限を受けません。その代わり、こだわったカメラワークなどは不可能になります。

 

例えば、バックしながら上昇する引きの絵を撮ったり、前進してバックするだけの動きをするなどです。GPSを装着していない機種がほとんどなので、一度ドローンを見失うと、発見は困難になります。

 

また、軽量といえど着陸は墜落に近いものになります。人の上に墜落すると怪我の元になりますので、プロペラガードなどは必ず装着するようにしましょう。

 

ドローン撮影のチェックリスト

イベントや催し物でドローンを飛行させる時の、チェックリストです。

 

イベント・催し物の定義に入るか確認する

イベント・催し物がイベント・催し物の範疇に入るか確認しましょう。もし、誰でも自由に出入りできる場所であれば、イベント・催し物であるという認識で間違いありません。

ですが、第三者が入れないような場所ならば、イベント・催し物という認識ではなくなります。そのような場所での開催ならば、国土交通省に確認を取るといいでしょう。

イベント・催し物がその範疇であることを確認する

各種届出が終わっているか確認する

イベント・催し物では、包括申請ではなく、個別申請をしておくことも忘れないようにしましょう。10営業日前までに、DIPSなどで申請が終わっている状態にしなければいけません。

そして、必要に応じて管轄の警察、イベントの主催者、土地の管理者への届け出も忘れてはいけません。後のトラブルにつながりますので、忘れないようにします。

個別申請を10営業日前までに終わらせておく
警察・主催者・土地の所有者への届け出も忘れずに

天候・風のチェック

当日の天候を常にチェックしておきます。特に毎秒5m以上の風が吹くと、ドローンを飛行させることはできません。そのことを、イベント主催者側へ通達しておきましょう。

風が吹くと飛行させられないことを通達しておく